養護学校高等部単独校の新設「方針」に対する見解


    2003年10月24日

養護学校の大増設で、過大・過密問題の抜本的な解決を

大阪府立障害児学校教職員組合

マスコミは10月2日、「府教委は、2006年4月開校めざして、知的障害養護学校高等部を新設する方針を決めた」と報道しました。今回の「方針」は、知的障害養護学校の過大・過密問題の抜本的な解決に、本当につながるのでしょうか。

マスコミ、府教委「方針」を報道
報道によれば、新設予定の知的障害養護学校高等部単独校の概要は、次のとおりです。
@ 知的障害生徒の就労支援を目的とする。従来の養護学校の枠組みを超えて、地元企業とも連携(中小企業の経営者等を講師として招く、生徒が職場実習に出向く)して先駆的な授業に取り組む。
A 専門学科を三学科(ものづくり科・流通サービス科・人間福祉科)設置する。
B 1学年50人で、定員150人程度の規模とする。
C 2006年4月の開校をめざす。
D 府立高校の再編整備に伴い、2003年3月に閉校となった旧府立玉川高校(東大阪市)校舎等を改修して活用する。
E 生徒は自力通学を入学条件とする。
F 新設校には、教員向けの体育実技研修センター(府教育センターの分室)を併設する。
G 休日などには学校の体育館やグラウンドを地域に開放する。

府障教、府教委に「方針」説明を求める
府障教は3日、マスコミが行った報道について府教委に説明するよう求め折衝を行いました。
府教委が行った「方針」に関わる説明の概要は、次のとおりです。
(1)府障教に対する事前の説明が、様々な事情から十分にはできなかったことについて釈明したい。
(2)新設予定の養護学校高等部に関わる内容については、ほぼマスコミが報道したとおりである (府教委として、マスコミの取材に応じた)。
(3)「新設校の名称」や「学校給食の実施」の判断は、現時点では未定(検討中)である。
(4)通学区域については、大阪府全域から受け入れることを考えている(ただし、スクールバスは配車しない)。
(5)今後については、平成16年度当初予算の確保に努め、「方針」を確定・具体化していきたい。
(6)今回の「方針」にもとづく施策は、「モデルケース」として位置づけている。
(7)9月府議会のなかで、「方針」に関する質疑がおこなわれる予定である。

府障教、「方針」の問題点を追及する
 府障教は、「方針」に関わる説明を受けて、次の問題点を指摘・追求しました。
(1)「方針」について、府障教には事前の十分な説明もおこなわないばかりか、予算的裏づけのない段階でマスコミを利用して一方的報道することは、労使慣行をも踏みにじるもので、異常な対応である。この間の経過と事情について、詳細に説明せよ。
(2)「方針」は、知的障害養護学校の過大・過密問題を抜本的に解決するために策定したものとして理解していいのか。
(3)「新設校の名称」「学校給食の実施」について、現時点でいずれも未定(検討中)としているのは、今後「○○高等養護学校」「学校給食は実施しない」とする方向性があるのか。
(4)新設校の「立ち上げ」によって、既存の障害児学校関係予算等に「しわ寄せ」はないと明確に言明できるのか。
(5)「モデルケース」とするのであれば、順次府下の各地域に新設する方針を策定していくことになるのか。
(6)「特別支援学校(仮称)」を始めとする「特別支援教育」体制やモデル事業等との関連は、どのように整理しているのか。
 府教委は、府障教の追求した問題点について、「現時点では未定」「今後検討をすすめて整理したい」などと、繰り返すばかりで明確な回答は示しませんでした。

「方針」に対する府障教の基本的立場
(1)「方針」をどうみるのか
 府障教や大阪の障害児教育をよくする会(以下「よくする会」)などは、この間「養護学校の過大・過密問題を解消するため、早急に六地域(枚方・寝屋川地域、松原・柏原・羽曳野地域、東大阪・中河内地域、堺・泉北地域、岸和田・泉南地域、大阪市)に養護学校を増設せよ」「通学用スクールバスを増車し、自宅から40分以内で通学できるようにせよ」などの要求を掲げて、とりくみをすすめてきました。 昨年度からは「よくする会」が、3000万教育署名の請願団体にも加わって、「障害児学校建設、障害児学級増設をただちに行うこと」(大阪府向け)、「障害児学校建設、障害児学級増設のための予算を大幅に増やすこと」(国向け)の請願項目を掲げて、高等学校や私学関係者とも共同して署名運動をすすめ、広く府民に訴えてきました。
 こうしたことから、今回の「方針」は、府障教や「よくする会」などの粘り強いとりくみが、府教委を追い詰め一定の施策を示さざるをえないなかで策定されたものといえます。

 府障教は、今回の「方針」に対して、改めて次の基本要求を掲げてとりくみを強めます。
@ 早急に東大阪・中河内地域に養護学校を建設して、過大・過密問題を抜本的に解決すること。また、残りの五地域(枚方・寝屋川地域、松原・柏原・羽曳野地域、堺・泉北地域、岸和田・泉南地域、大阪市)にも、養護学校を増設すること。
A 養護学校は、小学部・中学部・高等部(生活課程)があり、かつ「適正規模」「適正配置」にもとづく地域に根ざした小規模の学校とすること。
B 養護学校高等部では、豊かな青年期教育を充実させ、主権者としてふさわしい国民的教養や学力をつける普通教育を保障するための条件整備を行政の責任ですすめること。そのためにも、「就労支援」にもとづく職業教育偏重のカリキュラム編成を押しつけないこと。
C 養護学校高等部にも、希望する生徒全員が入学できる専攻科を設置し、教育年限を延長することによって、専門教育としての職業教育を充実させること。
D 「方針」に係る「プロジェクト会議(仮称)」には、府障教をはじめとする関係者の参画を保障するとともに、「方針」の具体化に限定せず幅広い検討をおこなうこと。
E「方針」の具体化にあたっては、教職員・父母・関係者の理解と合意をえてすすめること。
F すべての知的障害生徒の通学を保障するために、スクールバスを配車して長時間通学問題を、抜本的に解決すること。
G 学校給食については、他の養護学校と同様に自校直営方式で確実に実施すること。

(2)「方針」の問題点は何か
「方針」は、知的障害養護学校の過大・過密問題の抜本的解決に、到底つながるものではありません。わたしたちの要求である「早急に府下六地域に養護学校を増設せよ」にてらせば、程遠い内容であることは明らかです。
何よりも、新たな養護学校高等部単独校は、過大・過密問題の抜本的解決には何らつながらないばかりか、小学部・中学部・高等部のなかで築き上げてきた障害児教育の一貫性をつき崩すことになります。また、スクールバスが配車されず自力通学が入学条件となれば、入学は軽度の知的障害生徒に限定され、重度・重複の知的障害生徒は、学校選択の権利すら認められないことになります。さらに、「就労支援」「職業自立」という特色づくりのために、教育課程の編成においては適応主義的な「職業教育」「作業学習」が中心部分をしめる可能性がつよまります。結果的に、一段高いという序列意識を植えつける「高等養護学校」構想にもとづいて、知的障害児のエリート養成・訓練学校となる懸念すらあります。このように「方針」は、知的障害生徒間に入学条件をめぐって新たに選別をもちこむばかりか、養護学校間には「就労支援」「職業自立」をめぐって競争と序列化をおしつけるものです。

(3)「方針」の背景に何があるのか
第一に、スクラップアンドビルド・再構築の施策をすすめることによって、教職員や父母の間に分断を持ち込むねらいがあります。
 「方針」は、養護学校高等部の単独校を、府立高校の「再編整備」で今春閉校となった旧府立玉川高校の校舎等を活用して、2006年4月に開校するとしています。これは、府立白菊高校の校舎等を活用して、「大阪高等聾学校(仮称)」を開校する施策とも共通するものです。
 この間府教委は、「高校再編整備計画」のもと、「高校つぶし」を全日制高校のみならず、夜間定時制高校や工業高校にまで拡大しようとしています。「高校つぶし」をすすめる一方で、閉校した高校を活用して養護学校を「新設」することで、障害児学校と高校、さらに養護学校どおしの教職員・父母・関係者の間に、分断を持ち込むことをねらっています。
しかし、「高校教育への権利」「学ぶ権利」を奪う教育施策を転換させるとりくみは、「障害児の人権を守れ」「すべての障害児の教育権を豊かに保障せよ」のとりくみと結びついて、府下各地で共同行動に発展しつつあります。
 第二に、知事与党勢力による主張に同調・利用することによって、障害児教育リストラをいっそうすすめるねらいがあります。
この間、大阪府や府教委は「ともに学び、ともに育つ」教育の推進を主張する勢力に同調して、施策をすすめてきました。
「第3次大阪府障害者計画」(2003年3月25日策定)は、「大阪の障害児教育はノーマライゼーションの理念の下、すべての幼児児童生徒が『ともに学び、ともに育つ』教育を基本とし」「小・中学校や高等学校においては、障害のある児童生徒が地域でともに学べるよう」「盲・聾・養護学校については高等部の特色づくりをはじめとした改革を進め」などと規定しています。
また、「大阪府学校教育審議会答申・『知的障害養護学校高等部の今日的課題に対する改善方策について』」(2002年3月26日答申)では、「知的障害養護学校高等部においては、(中略)生徒・保護者のニーズや多様性を考えると現在の高等部の教育のあり方が必ずしも期待に十分応えているとは言えない」などと述べて、高等部教育の再構築を求めています。
さらに、9月府議会で知事与党勢力が、「ニーズが多様化するなかで、新しいコンセプトの養護学校の整備を、高校の跡地活用ですすめよ」と求めたことに対して、教育長は「具体化に向けてとりくむ」と答弁しました。
一方で、知的障害生徒の高校受入れに係る調査研究校について審議する大阪府学校教育審議会障害教育専門部会で、一部の委員が「早急に学区毎に2〜3校の受入れ校を。調査研究期間の終わる翌2006年度からは、すべての高校で受入れを。人的支援は、盲・聾・養護学校から高校に教員をもどす交流人事で」などと主張しています
いずれも「生徒・保護者のニーズ」「地域社会のニーズ」などを理由に障害児教育「改革」を主張していますが、結果的に「知的障害養護学校高等部の再構築」という教育リストラを側面から支え、促進するものです。
第三に、「特色のある学校づくり」を口実にして、学習指導要領路線にもとづく職業的自立促進・就職率向上などをめざす学校「改革」をおしつけるねらいをもつものです。
学習指導要領は、@ 職業教育に関する教科・科目が増え、また、「学校設定教科・科目」でさらに新たな設置の促進が図られようとしている、A 知的障害養護学校では、普通教科がすべて職業に関する教科・科目の履修にとって替えることができる、B 現場実習が就業体験とともに体験学習の一環として位置付けられた、などの内容をもつものです。このために、知的障害養護学校高等部では、職業的自立を推進するとして、職業教育をいっそう拡充させる可能性が浮上しています。
たとえば、就職率が悪いのは、作業学習の時間が少なく職業教育を軽視しているからとの指摘がありますが、作業学習の時間数が少ない学校の就職率がむしろ高いという事例もあります。つまり、作業学習の時間数が多いことと就職率の高さとの間には何ら相関関係はないといえます。さらに、障害者雇用率の未達成企業に、多くの大企業が名を連ねる現状は依然として放置されています。そんな中で、学校・ 教職員と生徒に職業的自立・就職率向上の責任が問われることになれば、ますます生徒を職業教育に追い込んでいく懸念があります。
この間、多くの学校で職業的自立を優先する職業教育偏重のあり方が見直され、青年期を迎える生徒に人格的な発達を豊かに保障する高等部の教育づくりが展開されてきています。
また、府教委は日頃から、「大阪府の障害教育は、国に先んじている」などとしていますが、「特別支援教育(最終報告)」にもとづく「特別支援学校(仮称)」との関連については、一切明らかにせず「方針」をトップダウンの手法で強行する構えです。
高等部教育では、職業教育に偏ることなく、憲法と教育基本法に基づく教育の実現をめざして、青年期の豊かな人格形成や学力をつける普通教育の保障こそ求められるのではないでしょうか。

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2.資料  学校教育審議会障害教育専門部会の記録から抜粋

1.第14回(2002.6.10)
(委員)@調査研究校について4校から5、6校へ、学区にひとつという中学校の、教職員、保護者の要望がある中、なかなか進まない。 人的支援の問題については、毎年2人ずつ増え、生徒の障害の状況も多様化することに対して人的支援が遅れている。
調査研究は平成17年度までの長い期間、A2006年には高校の全校が受け入れをするのかということを考えると、1年1年が大切。1年ごとに受け入れ4校以外の高校の先生や周辺地域の人の意識が変わり、調査研究の成果が浸透していかなければ広がりにくい。
調査研究がさらに深まっていくには支援が大切である。人的支援が重要である。
西成高校の研究テーマの中で、地域の中学校との連携というのがあり、中学校の協力があればスムーズに行く面がある。中・高の兼務が法的に可能になっているのでそれをどう調査研究に活かすかだ。また、盲・聾・養護学校と府立高等学校の教員の交流人事が進められている。4校に対しては交流人事で、盲・聾・養護学校へ行った教員を活かし、戻す交流人事をしていただければ調査研究の人的支援になると思う。

2.第15回(2002.11.25)
 (事務局)交野養護学校の校内的なとりくみとして小学部・中学部・普通課程・生活課程4つのプロジェクトチームを立ち上げて取り組んでいる。また、それらを統括する全校的なプロジェクトチームを立ち上げている。外部の専門家との連携については、理学療法士、整形外科医の定期的な来校に加えて、言語聴覚士の定期的来校をさぐっている。教員の専門的知識向上のための校内研修などの取り組みを進めている。
 1年目は中間まとめ。最終まとめは府下全域の盲・聾・養護学校に広げていく。
 盲・聾・養護学校において専門性について取り組んできているという指摘だが、専門性の捉え方にあいまいな部分があり、個々の教員の向上、学校としての機能的専門性というあたりが深められていない。個々に専門性のある人はいるが、全体的に機能していく体制が取れていないので、校内組織としてどう取り組んでいけば全体として高まっていくかというテーマも含めて、研究の中で深めていきたい。
 現在交野養護学校1校で進めているが、モデル事業を進めていく上でセンター機能をどう発揮していくか検討していかなければならない。
 相談機能については、個人の力量より校内の組織体制作りのほうが重要と考えているので、そちらが先決と考えている。

(事務局)平成15年度はコースという形で始め、茨木養護学校と守口養護学校では学科設置に向けて取り組んでいく。
(事務局)松原高校の件は、学校はクラスでの授業、付き添い、別室での授業と3つの形態を考えていたが、保護者はすべて教室でという考えであった。その点で一致点が見られず、授業の日は(保護者が)子どもを欠席させていた。第三者機関として設置されているわけではないが、今回の場合は教育委員会が間に入って話をし、今年3月から保護者の要望に合わせ教室へという方向でやっている。定期テストが課題として残っている。保護者は教室で受けるのが当たり前という意見である。しかし、多動性のため他の生徒への影響も考えて、テストについては他の教室でという方向で調整しているところである。

3.第16回(2003.3.28)
 (事務局)園芸志願者については、4市から受検しています。受検者の学校は養護学校が1校と中学校が10校となっている。
西成高校では、すべてクラスで横に付き添うという形で実施しております。カリキュラム上は、すべて付き添いとなっていますが、生徒の体調やその日の授業内容によっては別室で個別で授業を行う場合もあります。しかし、基本はクラスで教員が付き添ってとなっています。  松原高校では、他の生徒と同様に、付き添いもなくクラスで授業を受けるのを主としております。これは、本人と相談しまして、クラスで授業を受ける、個別で授業を受けるなどを決めております。

 来年度の支援体制について説明したいと思います。
 昨年度に引き続き、コーディネーターを担う教員を1名配置しております。また、先ほど議論いただいた付き添いや個別授業を行うため、非常勤講師時間を配置しております。学習サポーターというのがございますが、これは大阪府立大学と大阪教育大学の大学院生の協力を得まして、たとえば授業の補助に入っていただいたり、放課後のサークル活動のサポートなどをしていただいております。
 食事やトイレの介助が必要な生徒がいる場合には、介助ボランティアを配置しており、阿武野と園芸については現在利用しておりません。今後必要とされる場合には、臨機応変に配置する予定です。緊急雇用対策を活用した教員補助員も配置しておりまして、学習室や授業の中でのサポートをしております。また、養護教諭につきましても各校2名配置しておりまして、日々の健康チェック、保護者との相談にあたっていただいております。
 非常勤講師の時間は、阿武野48時間、西成・柴島・松原36時間、園芸18時間。
教員補助員は、いきいきプランという緊急雇用を活用した制度により配置していますので、平成16年度までとなっております。実態としては、阿武野では、学習室での自立活動の時間に教員といっしょに活動をしており、西成では、介護福祉士の免許を持っているので、生活介助や放課後のクラブの付き添いや保護者との相談に当たっています。柴島・松原では、チーム・ティーチングの形での付き添いや放課後活動に参加しています。いきいきプラン終了後も、さまざまな制度の活用を検討していきたいと考えています。

4.第17回(2003.6.23)
 障害者政策というのは、障害保健福祉圏域ということで目標数値を設定してきましたけども、支援費が始まると行政単位というのが非常に大事になってくるので、高校の問題も含めてですが、B各市で2、3校ぐらい知的障害者を受け入れる学校がなければ、やはり厳しいと思います。先ほど、学区の話が出ていましたけれども、やはり行政単位というのをきっちり考えないといけないと思います。
 どこの市で生まれた不幸というのを作らないようにしないと、いけないので、C偏在をなくして知的障害者を受け入れる高校を作ることが大事だと思います。

   選抜基準についてですが、従前からの中学校からの連携は、複数の学校から受検した場合、従前からの中学校の連携はすくなくとも選抜のひとつの重要な要件になってしまう。それは、本人の責任ではないのに、たまたまどこに生まれた、どこの中学校に入ったなどの理由が絶対的条件になっているとしたら、大きな問題になるのではないかと思います。特に受検人数がこれだけ増えてきていて、各地から受検する生徒が増えているのに、実際は連携のある中学校からしか取りませんということでは、最初からそのことを伝えておいた方がむしろ丁寧です。D受検を認めている以上、チャンスを増やしているのですから、連携校というのを条件にするのは課題が残ると思います。
 Eもし調査研究校を拡大するのを考えるのであれば、各学区に最低一つ用意されなければならない。
 2名という制限は、受検する側からするとせっかく調査研究校という制度があるのに、人数がいくら増えても2名しか入れないのでは、新しい選抜と捉えられても仕方ない、という懸念があります。

5.第18回(2003.7.22)
 (事務局)9月の上旬に中間報告の案を提案させていただきまして、ご検討をしていただきたいと思っています。それを踏まえまして、10月の上旬に最終調整、確認をしていただくということで、10月上旬に中間報告の確定をしていただきまして、その後、10月下旬に親会議のほうへ提出し審議をいただくという予定を考えています。
10月下旬という時期のことですが、これは来年度の入学選抜の方針を出さなければいけませんが、そのことに影響してくる可能性もあります。そういう意味で10月の下旬に審議を終えていただきたいということです。

(委員)F「知的障害児の受け入れ校の配置について」という項目を立てて、どこにいくつ配置するべきなのかという、先ほども偏在がないようにということでしたが、どこにいくつ必要なのか、どんな学校を選ぶべきなのかという事を、地域性というものを含めて具体に考えていく必要があるというのが、この間のモデルの状況を見て感じるところです。そういったところを検討することと、それぐらいの学校数を準備するのに、あと2年半で何を準備すべきなのか、G受け入れ校の配置について項目立てをして、制度的課題のところで論議するべきだと思います。
Hそのためには、何人ぐらいの知的障害児が普通高校への受検を希望しているのかというニーズの把握というのは不可欠だと思いますので、調査をきっちりとしていただく必要があると思います。

I潜在的なニーズを含めて、実態を捉える必要があると思います。そういう当事者のニーズをつかまないで、制度や財政がこうだから仕方がないということで続けるのであれば、モデル研究を始めた意味はありません。せっかくモデル研究を始めるということで決めて、実現をするために始めたのであって、試してみるというつもりで始めたわけではないはずです。普通高校に知的障害児が入っていけるということが、あるべき姿として追求しようということで、モデル研究で始めたわけですから、実現するために何が必要なのかという論議を、きっちりしきらないと意味がないと思います。

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3.資料  大阪府教育委員会等の見解・動向の移り変わり


      2003.6.20 府障教調査
1.平成2年度 大阪府教育委員会委託調査
今後の養護教育のあり方に関する調査報告書
1991(平成3)年3月 養護教育研究会
(中澤和彦・兵庫教育大、猪岡武・大阪教育大、小西正三・大阪教育大、友久久雄・京都教育大、村井潤一・京都大)
@ 通学上の問題点
障害が重度・多様化している中で、長い通学時間から健康管理・安全確保など教育上の問題も生じており、通学バスの増車のみでは物理的な距離が縮まらないといったこともあり、当初、考えられてきた7ブロックという養護学校の配置基準は見直せざるを得なくなってきている。
(通学バス乗車時間の長時間化は、児童・生徒の心身の健康上や生活リズムの安定上に少なからぬ悪影響を及ぼしている。恒常的に60分を超える通学は、通学バスに乗っている児童・生徒たちにとってかなりの精神的・肉体的な負担を伴うものと思われ、通常の小・中学校の通学圏と比べても無理があると考えざるを得ない。また、肢体不自由養護学校の通学バスには相当重度の障害を有する児童・生徒が乗車しており、乗車中の発作等も当然に想定されるところであり、遠距離・長時間のバス通学は極力解消する対策が緊要である。)

A 7ブロック通学区域制の見直し
今後、可能な限り地域の健常児と共に学ぶという考え方の強まりが予想されることもあり、本府における現行の7ブロックに分画した広域通学区域を基本に置く養護学校の配置基準については、早急に見直し、小・中学校の養護学級との連携のもとに、可能な限り通学区域を中・狭域化することが必要である。

B 学校規模の適正化
すでに大規模化している養護学校については、文部省の指導の考え方に沿って、当面、40学級・教職員100人を超える学校の分離促進を図るとともに、将来的には30学級・教職員60〜70人程度の学校規模を目指すことが必要である。 (養護教育諸学校の場合、現行の小・中学校のように適正規模の法的根拠はないが、児童・生徒の障害の程度や学級数、教職員数、施設面等、総合的に判断すべきである。)

2.今後の養護教育のあり方について(答申)
1992(平成4)年12月18日  大阪府学校教育審議会

@ 養護学校の整備について
(前略)学校規模の適正化を図ることが重要と考える。
精神薄弱養護学校については、効果的な指導や円滑な学校運営に配慮し、さらに将来の児童生徒数の動向等を見極めつつ、児童生徒数150〜200人程度の規模で学校を整備していくことが妥当と考える。
府立養護学校の配置については、現在、教育事務所を単位とする府下7ブロックに、精神薄弱養護学校及び肢体不自由養護学校を各1校の計2校ずつを設置して、児童生徒の受入れが図られてきている。
児童生徒の今後の動向を予測すると、基本的には、現行の体制で対応できると考える。しかし、将来にわたって精神薄弱養護学校の規模の適正化が困難な地域にあっては、1ブロック2校体制を補完するため学校の増設が必要と考える。
また、府立養護学校に就学する多くの児童生徒が通学バスを利用している実態から、通学上の負担を軽減するため、通学バスの乗車時間の改善を図ることが強く望まれる。

3.ノーマライゼーションの動向等に対応した養護教育の在り方について(答申)
   1999(平成11)年1月22日  大阪府学校教育審議会第3分科会

@ 養護教育諸学校、養護学級等の充実
○ 養護教育諸学校の幼児児童生徒の障害の状況の重度・重複化、多様化を踏まえ、又今後、求められる役割に対応するため、中間答申では、知的障害養護学校高等部の今後の在り方として、肢体不自由養護学校において知的障害のある生徒を受入れるとともに、養護学校の将来像として「総合養護学校」構想を示した。障害種別の枠をはずした「総合養護学校」への転換については、今後とも継続した検討が必要である。
○ 障害種別が異なる児童生徒が在籍している養護学級においては、個々の実態に応じ
た適切な指導を行う上から、個別の指導計画を作成するなどにより教育課程を工夫することや、学級設置の一層の充実を図ることが必要である。

4.教育改革プログラム
   1999(平成11)年4月  大阪府教育委員会
○ 府立養護教育諸学校の現状と課題
知的障害の児童・生徒については、平成10年度、小学部640人、中学部700人、高頭部1492人の合計2832人となっており、養護教育諸学校在籍児童・生徒数の約56%となっている。さらに、一部の知的障害養護学校では、在籍児童・生徒数が200にんを超える状況(平成4年12月学校教育審議会答申における適正規模は150〜200人)となっており、その解消が課題となっている。

○ 養護教育諸学校、養護学級等の充実
○ 肢体不自由養護学校への知的障害児の受入れの段階的な推進
肢体不自由と知的障害の障害種別ごとに設置している養護学校については、児童・生徒の障害の重複化に適切に対応できるよう、総合的な養護学校への移行を目指す。当面、これまでの教育効果を踏まえ、施設・設備等の条件整備を行い、肢体不自由養護学校への知的障害児の受入れを段階的に推進する。
○ 養護教育諸学校の分教室の設置等の推進
府立高等学校に養護教育諸学校の分教室を設置することなどにより、高等学校の生徒との交流を推進するとともに、高等学校に在籍する障害のある生徒に対する教育方法等の支援を行う。
○ 小・中学校の養護学級における教育の充実
児童・生徒の障害に応じたきめ細かな教育を充実するため、障害種別ごとの養護学級の設置を拡充する。

5.2001(平成13)年 大阪府議会で知事が検討を約した事項

@ 2001(平成13)年 2月大阪府議会
○ 知的障害養護学校の児童生徒数の増加による教室不足
(答弁要旨)
5校の知的障害養護学校で、生徒の増加に伴い、教育活動に支障のない範囲で特別教室を一部転用していると聞いている。今後、ノーマライゼーションの動向や児童生徒数の推移を見ながら、教育委員会ともども検討してまいりたい。
(処理状況)
知的障害養護学校高等部の今後のあり方については、13年度の学校教育審議会で審議中である。児童生徒数の増加への対応については、既存の府有施設の活用や校舎の増築などの方策について早急に検討をおこなう。

@ 2001(平成13)年 9月大阪大阪府議会
○ 知的障害養護学校の整備
(答弁要旨)
今後、ノーマライゼーションの動向や児童生徒数の推移を見ながら、様々な手法を含め、教育委員会ともども検討してまいりたい。
(処理方針)
以下の様々な手法について検討をおこなっている。
○ 肢体不自由養護学校高等部に知的障害のある生徒対象の生活課程の併設
○ 府有施設、府立高校の余裕教室等の活用
○ 教育活動に支障のない範囲での養護学校特別教室の転用
○ 通学バスの適正な配置

6.「第3次大阪府障害者計画」パブリックコメントに対する「府の考え方」(抜粋)
  2003年1月31日から2月28日まで実施
個人8名・団体8団体・「意見・提言」件数104項目

@ 盲・聾・養護学校についての意見
「集団的な学びの場の保障を」「養護学校の過大・過密解決を」「「地域に根ざした盲聾養護学校の増設を」「総合養護学校は疑問」など。

「府の考え方」
○ 大阪の障害児教育は、ともに学びともに育つことを基本にしており、ノーマライゼーションとリハビリテーションの理念を踏まえ推進しております。
障害のある児童・生徒は地域の小中学校の養護学級や通常学級、専門的な教育機関である養護学校など様々な場で学んでいますが、それぞれ集団的な学びの場であると考えており、それぞれの学びの場の条件整備に今後とも努めてまいります。
現在、府立の盲・聾・養護学校は24校ありますが、養護学校については、地域性も勘案して府内7ブロックに知的障害養護学校10校と肢体不自由養護学校8校を整備してきました。
こうした中、近年、知的障害のある生徒が増える傾向にあり、こうした生徒数の増加への対応については、ノーマライゼーションの理念の浸透の下、高等部教育の充実も視野に、特色づくりをはじめとした養護学校の将来像を見据えながら、高等部の分離の検討や総合的な養護学校への移行など幅広く検討していきたいと考えております。総合養護学校については単なる混在を意味するものではなく、児童生徒の障害を踏まえた教育の提供、学級の編制等に努めていくものです。
今後、既存の養護学校の整備・改修や増築、バスの増車など必要な施設設備の整備に努めるほか、今後の児童生徒数の推移や全体的な養護学校の設置状況を勘案しながら、緊急的な対応も含めて検討していきたいと考えております。
また、盲・聾・養護学校は教職員の専門性の向上を図ってまいります。

A 養護学級についての意見
「障害種別による学級認定を」「十分な教員配置を」「施設設備の整備を」「通級指導教室の位置付け」など
「府の考え方」
○ 小中学校の養護学級については、児童生徒数の推移を踏まえ、障害種別の学級設置を推進してまいります。通級指導については国制度の動向が現時点では明らかでなく言及していません。
公立小・中学校の施設整備は、学校教育法に基づき設置者である市町村が実施することが基本であり、府は市町村が国の補助事業を活用し、安全で快適な教育環境の整備を推進するよう働きかけています。
府立高校においては、障害のある生徒が、支障なく学習活動を行うために必要な施設設備について、今後とも計画的な実施に努めてまいります。

B 通常学級についての意見
「特別な教育的ニーズのある児童生徒に対する教育」
「府の考え方」
○ 現在、学習障害等にかかる研究会において、校内委員会、専門家チーム、巡回相談などの体制づくりについて研究中です。 研究の成果について、通常の学級に在籍する特別なニーズのある児童生徒に対する指導に反映させていきたいと考えております。

C 高校についての意見
「知的障害のある生徒受け入れについて」
「府の考え方」
○ 高等学校における知的障害のある生徒の受け入れにかかる調査研究校においては、「受け入れ態勢・指導体制の在り方、教育課程と個別の指導計画の研究、指導内容や方法、評価に関する研究、進路指導や卒業後のアフターケア、入学者選抜のあり方」など様々な研究テーマを設定しております。
これらの実践研究を進める中で、高等学校教育への位置付けを明確化していきたいと考えております。
また、卒業後を視野に入れた「個別指導計画」の作成等において、社会参加・自立に向けた個に応じた教育の充実を図ってまいりたいと考えております。

7. 平成16年度 教育・文化に関する国の施策並びに予算に関する提案・要望 大阪府知事 太田 房江(2003.6)

○ 障害のある幼児児童生徒の教育の充実
(1) 障害のある児童生徒の就学基準等の改訂を踏まえ、社会のノーマライゼーションの進展を一層図る観点から、小・中学校において、障害のある児童生徒が適切な教育を受ける条件整備が進むよう、介助員の配置等を行う市町村に対し、財政的支援を図られたい。
(2) 障害のある幼児児童生徒の教育の充実を図るため、養護学級の学級編制基準及び通級指導担当教員定数を改善、また、盲・聾・養護学校の教職員標準法定数内(教諭等)において自立活動、職業教育の専門的技能をもつ人材が配置できるための制度改正をされたい。
(3) 学校教育法第74条において、都道府県に盲・聾・養護学校の設置義務が課されているが、近年の児童生徒数の増加傾向や教育の地方分権の推進等の状況に鑑み、設置義務を一定規以上の市にも拡大するなど、そのあり方について検討されたい。
(4) 学校教育法第75条に規定する高等学校の養護学級の学級編制基準を示されたい。
(5) 盲・聾・養護学校に係る通学用スクールバスについて、その運行実態に見合った適切な財源措置をされたい。

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